革の豆知識

知っているようで知らない私たちの身近に存在する革のこと。
あなたの大切な革製品を長持ちさせるのにお役立てください。
革の種類
革ができるまで
すべての動物は皮をまとっています。そして、生きている動物にとってはどうしても必要なものでどんな役目をしているのでしょうか。 皮は、血管や肉体を外傷、虫、細菌から守り、また、汗腺によって新陳代謝を行い、気温の変化に対応して体を保護しています。 皮の組織は、外側から表皮、真皮層、皮下組織から成り、真皮層は、コラーゲンと言うたんぱく質繊維で出来ており一番大切な組織です。 そして、真皮層は、すべすべした銀層と網目のように繊維が絡み合った網状組織とから成っています。この部分が私たちが利用している「革」です。

 

皮革製品の手入れ方法
革は使えば使うほど味わいがでてくる素材ですが、扱い方を間違ったり、手入れを怠ると、製品の寿命が極端に短くなってしまいます。 革製品を長くご愛用頂く為にも、ここでは簡単な手入れや保管方法をご紹介します。
一般的な靴の手入れ

靴は、手入れ次第である程度美しく保つことができます。ただ、履いた後、そのままにしておくと型崩れ、カビ、シミなどの原因となり、早く劣化させることになります。保管する時の手入れも靴を長持ちさせるための重要な要素です。

保管

靴をしまう前に必ず陰干しをして乾燥させてから、クリーナーとクリームで十分に手入れをすることです。汚れはカビの原因になりますから注意が必要です。特にブーツのように冬期に履いて、梅雨期、夏期を通して長期に保管する場合は、カビが発生しやすい高温多湿期には、時々風にあてて、簡単に手入れすることで、カビの発生を防ぐことができます。

新しいうちから靴クリームを

靴が新しいうちに、その素材にあったクリームを塗っておくと、革に油分の補給が出来ると同時に表面にワックスの薄い保護膜ができ、キズや汚れを防ぐ働きをします。それがあとのお手入れを容易にし、靴を美しく保つための第一歩となります。

靴クリームの種類と性質

一般的に靴クリームは、靴の汚れ落とし。靴をしなやかに保つ。靴甲革の色合いを調整する。ツヤをもたせる。防水性を付与する。などのために使用します。 現在市販されている靴クリームの種類は次の通りです。

乳化性: ビンまたはチューブなどに入っていて、ペ一スト状か液状。
油性: 缶に入っている。半固形。
エアゾール: 缶に入っている。霧状または泡沫状。

わが国ではビン、チューブの乳化性クリームが最も一般的で、靴クリームの75%以上を占め、液体クリーム、油性缶入リクリームはこれに続きます。また最近ではエアゾールが機能、性能面での特徴を生かした防水剤、汚れとり兼用ツヤ出し剤として多くの伸びを示しています。今後、素材の多様化に伴い、多品種、専用化がすすむことが予想されるジャンルでもあります。それぞれの特徴をまとめてみます。

乳化性クリーム
乳化性クリームはワックス、油、水の3成分を乳化剤で混合乳化したものです。乳化の型によって、ワックスと、油のまわりを水で包んだ水中油型(O/W)と、逆の型の油中水型(W/O)とに分けられます。前者は化粧品のバニシングクリーム、後者はコールドクリームに類似しています。一般的には水中油型(O/W)が普及していますが、状態的にはクリームが水に馴染み易く、クリームの表面が光って見えることで判断できます。ツヤ、柔軟保革性の他に、油溶性染料、水溶性染料、顔料レーキなどが併用できるために着色性に優れ、さらに自由に調色が可能なため、年々変化する流行色にも対応でき、商品価値に優れているのが特徴です。乳化性のなかでも液状のタイプは、戦後急速に発達したクリームで、塗って乾かすだけでツヤの出る、いわゆるインスタントシャインのクリームです。これはワックスと水の2成分を液状乳化したクリームで、着色には油溶性の染料を主体に使っています。このタイプの高級良質のクリームには、ヒビ割れの原因となるような樹脂は添加されておらず、ツヤ出し性、耐屈曲性に優れたワックスをべ一スに、皮革柔軟剤を加えて、従来の間題点を改善した使い心地の良い商品に成長しています。その他の液体クリームには専用品が多く、例えばエナメル用、ブーツ用、メッシュ用、スエ-ド用などのクリーナーがあります。
油性クリーム
乳化性と大きく異なる点は、ワックスと油の2成分から成り、水が入っていないことです。そのため、乳化性クリームより防水性の点で優れています。また、成分面では油脂をベースに、ワックスと組み合わせた保革油タイプも含まれます。着色成分には、油溶性の染料、または顔料を使い調色しますが、色数が少なく、スタンダードな色調のものが主体となります。
エアゾールのタイプ
エアゾールの機能面を利用して開発されました。霧状と泡沫状の2種類があり、一般的に前者は油性タイプ、後者は乳化タイプが多いようです。靴のツヤ出しの他、防水剤、消臭剤などを混入したものもあり、使用対象をスエードに限ったものもあります。
クリーナー(汚れ落とし)
新しいうちは美しかった靴も、ホコリや古いクリームなどで、徐々に汚れてきます。靴の汚れを落とすには、クリーナーが必要ですが、革の種類によってクリーナーを使い分けることも大変重要です。間違った使い方をすると、靴の性能を損ないますので、革にあったクリーナーを選ぶことが必要です。クリーナーにはチューブ入り、乳液状、エアゾール、固形(ラバー)などのタイプがあり、種類には油性、乳化性(中性、アルカリ性)があり、ワックスが併用されていて、ツヤ出しを兼ねたものもあります。特に、アニリン調の水染めの革や起毛革製品(スエード、べロア調)には、必ず専用のクリーナーを使う必要があります。また、クリームやクリーナーには、防腐剤や防カビ剤が添加されているのが普通です。また革の種類、例えばエナメル革やスエ-ド革など、それぞれ手入れ法が微妙に違ってきますから、購入の際、必ず確認しましょう。
雨の日には・・・
革は水分を含むと、革の繊維が硬くなったり、色落ち、シミなどの原因になりやすいので、防水剤を使用しておくと安心です。濡れてしまった時は、シューズキーパーや新聞紙で型を整えてから、風通しの良い日陰で乾燥(濡れた革は直射日光や直火などの高熱には非常に弱い)し、その後乳化性のクリームを十分に塗り込んで、ツヤと栄養分の補給をすると良いでしょう。 その他にも、普段からホコリや汚れをこまめに取り除くようにしたり、毎日同じ物を履くのではなく、時々休養させるようにしましょう。
バック

革バッグ(カバン、袋物)は、少し使うと、使う人に馴染んで、さらに良さが増してくるものです。ただ、もともと天然のタンパク質からできていますので、使い方やお手入れの仕方が、製品の寿命に大きく関わってきます。十分配慮しましょう。

日常的な手入れ法
水に濡れた場合
雨など水に濡れてしまった時は、乾いたタオルで叩くようにして水気を除き、風通しの良い場所で陰干しします。濡れた革は熱に弱いので、ストーブやヒ-ターなど高温には絶対近づけないようにしましょう。また、乾燥すると、変形することが多いので、できるだけ変形しないように形を整えてから乾燥するようにしましょう。一度中まで濡れてしまった革を乾燥すると、革中の油分が不均-になって、部分的に硬化することがあります。こういう時は指定のクリームを柔らかい布につけて輪を描くように軽く擦り込みます。ただし、クリームでシミになることもありますので、必ず指定のクリームを使い、また、見えにくい部分で試してから使用するのが良いでしょう。
汚れ落とし
普段は柔らかい布でから拭きしたり、ブラッシングしてホコリをはらう程度で十分です。手アカや汗などで汚れがひどくなってきたら、指定のクリーナーを布につけ、軽く拭くようにしましょう。この場合も見えない部分で試してから使用するようにしたいものです。
保管

靴同様、最も気にかかるのがカビです。長く保管する時はカビの栄養分になってしまう汚れやホコリをできるだけ除去することが肝要です。汗やアカは湿ったタオルで、これらが付着していそうな部分を拭くのも-つの方法です。天気の良い日に陰干しして、水分を少なくしてから保存するのも大切です。ナフタリンなどの防虫剤は、直接触れると変色したり、接着部が剥がれたりすることがありますので、使用しないほうが良いでしょう。

衣料

革衣料は革の種類や仕上げ方で異なりますので、基本的には専門家に任せるのが良いようです。ここでは大きく二つに分けて、簡単な手入れ法や保管法をご紹介します。

銀付革の手入れ法
汚れ
軽い汚れは乾いた布で拭きとるか、ブラッシングします。部分的な汚れは指定のレザークリーナーを布につけて軽く拭きとります。ただし、アニリン仕上げの革の場合、クリーナーがしみ込んでシミになることがありますから、目立たない部分で試してから実行に移すことです。また、革用消しゴムや、汚れていない上質の消しゴムでも落とすことができますが、これも影響がないかどうか見えないところで試してからの方が良いでしょう。ベンジン、シンナー、中性洗剤などの使用は色落ちや革のツヤがなくなるので止めましょう。
濡れてしまった場合
水滴を払い落とした後、タオルでたたくようにして水分を吸い取り、風通しの良いところで陰干しします。濡れた革は熱に弱いのでストーブなどは避けて下さい。乾燥後、軽く揉んでもゴワゴワするようなら、指定の革用乳化クリームを塗って油分を補ってください。
起毛革(スエード)の手入れ法
汚れ
粉塵等の汚れはこまめにブラッシングすることです。ブラシで取りにくい汚れやテカリは、天然ゴム系のブラシを使用すると良いでしょう。液体の汚れは内部に浸透しないように速やかにティッシュペーパーなどで、叩くようにして吸い取ります。
濡れてしまった場合
銀付革と同様にします。
カビの手入れ

銀付革はカラ拭き、起毛革はブラッシングします。縫い目などの細かい部分は歯ブラシを使用すると良いです。カビを除去したら、ハンガーにかけて陰干しにし、乾燥させ、十分に除湿します。良く除湿すればカビの発生は抑えられます。

保管

あらかじめ陰干しして水分を減らし、カビの発生しにくい状態にします。ハンガーで保管する場合は、肩幅にあった厚みのあるハンガーを用い、型くずれしないよう気をつけましょう。ビニールカバーは革の呼吸を妨げ、カビ発生の原因となりますので使用しないでください。革用に塩化カルシウム系の除湿剤を用いることがありますが、これは放置したままにしておくと潮解し、液状になります。その液体が革に付着すると、収縮・硬化し、修復不能になりますので、シリカゲル系除湿剤を用いるようにしましょう。

手袋
革素材別の手入れ
銀付革の場合
泥やホコリの汚れは、乾いた布で拭くか、ブラシをかけます。付着がひどい時は濡れた布で拭き、必ず陰干しにします。落ちにくい場合は指定のクリーナーを柔らかい布に付けて拭きます。部分的な軽い汚れは良質の革用消しゴムか、食パンの白い部分で軽くこすりとります。雨や雪で濡れた場合は、乾いたタオルで叩くようにして水分を吸い取り、風通しの良い場所で陰干しにします。
スエードの場合
泥やホコリの汚れは、硬めのナイロンブラッシングを強めにかけると、スエードの毛切れとともに汚れがとれます。毛が倒れ、テカテカ光ってきたり、ソフトな光沢が失われてきた時には天然ゴム系の特殊なブラシで擦るようにします。
洗濯の方法(ウォッシャブルな革のみ)

革のなかにはウォッシャブル革を使用し、家庭で水洗できるものもあります。洗剤はウ一ルや絹用の中性洗剤を使用します。ぬるま湯ですすぎ、タオルで包んで水分を取り、陰干しします。生乾きの状態になったら手にはめて軽く揉むようにして形を整えます。洗濯液につけたまま長時間放置すると、革の劣化がすすみ、弱くなることがありますので注意しましょう。

カビの手入れ

早期発見が大切です。銀付革はカラ拭き、スエ-ドはブラッシングで落とします。縫い目や細いところは入念に歯ブラシで除くようにします。自分で手におえない時はクリーニング店に相談してみましょう。

保管

革手袋は上質の革を使用していますので、無理にひっぱると型がくずれたり、破れたりします。丁寧に扱うことが肝要です。保管は高温多湿の場所を避け、ホコリや湿気を処理してから保管します。

革のことQ&A
革製品のお悩み・ご質問にお答えします。

 

手入れ剤は、形状(霧状、泡沫状、液状、ペースト状、半固形状)、用途(保革用、汚れ落とし用、防・はっ水用など)、製品用途(衣料用、靴用など)、革用途(銀付革用、起毛革用など)などによって分類され、多くの種類が市販されています。
だからこそ、手入れ剤は使用前に必ず目立たないところで確かめてから使用する必要があります。手持ちの革にどんな手入れ剤が合うのか分からない場合は必ずお店又は専門家に相談するようにしましょう。

革衣料は容易に洗濯やクリーニングができないので、日頃の手入れが重要ですが、それでも汚れがひどくなった場合にはクリーニングせざるを得ません。

その場合、特に何を注意すれば良いか列挙してみました。

  1. 皮革専門のクリーニング業者、あるいは専門業者に取次ぎできる店であることを確認する。
  2. 店頭の受付時に立ち会って汚れ、変退色の程度、傷、破れ、ほつれなどをチェックするできれば袖や丈の寸法も測っておくと良い。またレザーに限らないが、ボタンや装飾品など付属品の確認も行うと良い。
  3. スーツなどペアの物は片方が汚れていない場合でも、色あわせ用に店に預けると良い.コートなどのベルトも参考になる。
  4. 動物の種類や革の表面の加工法などにより、クリーニング中の機械的な作用によって生体時の傷や血管跡などその革の持つ特徴が顕在化してくる場合もあることを認識しておきたい。
  5. 汚れが除去されると着用中の光による退色が顕在化することがあるので、認識しておくこと。
  6. 一般的にクリーニングすると新品同様に仕上がってくるという錯覚(期待)があるが、革にまったく変化を与えず、汚れだけを取ることは不可能。ある程度の変色、縮みや、風合いの変化が生じることがあるのはやむお得ないと思っておきたい。なお、クリーニング店から戻った革衣料は、すぐに袋から出し、石油の臭いなど異臭がした場合は、店に再処理を依頼するか、風通しの良い屋外で臭いがなくなるまで陰干しすると良いでしょう。その後、型くずれを防ぐため肩幅にあった厚手のハンガーに掛けて、直接光の当たらないところにゆったりと吊るして保管しましょう。

革の強度は主にその断面の主要部分を占める網状層の厚さ、繊維の太さと絡み具合によって決まります。牛馬などの大きな動物は皮が厚いし、羊や子牛は原料皮自体が薄いのです。またそれぞれの動物の部位によっても厚さが異なります。革衣料を縫製する時、糸の太さや針目の数などの縫製条件も大変重要になってきます。素材が薄すぎたり、素材と縫製条件があっていないと、革切れが生じる原因になりますので、注意が必要です。注意していても革が破れてしまった場合、補修が不可能だと思って下さい。.こうしたケースも頭に入れて革衣料を購入する際には、ポケット口や、スカートのスリットなど、着用によって力がかかる部位の縫い目をよく観察することが大切です。

シーズン中のこまめな手入れとシーズン後、保管前の手入れが必要です。汚れは時間を置く程取れにくくなり、カビ発生の原因になるからです。ただ汚れがひどい場合は別にしてシーズン終了ごとにクリーニングに出す必要はありません。軽い汚れはブラッシングや消しゴムタイプのクリーナーで落とすようにしましょう。水溶性の汚れは、濡らして硬くしぼったタオルなどで拭くと良いのですが、水で濡らしてもしみや色落ちが生じないことを目立たない部分で確かめておくことです。市販のクリーナーには消しゴムタイプ以外にも、ペースト、乳液、スプレータイプなどがあります。また、水溶性などの汚れを良く落とすもの、油性の汚れに効果があるものなど、いろいろな種類があります。良く確かめて汚れにあったものを使うようにしたいものです。
先にも書いたように、革の種類に合っているか、影響はないかなど、使用する前に目立たないところで確かめるのはいうまでもありません。表面がスムースな革で、手触りがかさかさしてきた時はレザーウエア用のクリームで油分を補給しておきましょう。靴クリームを代用するのは避けてください。他の衣服を汚してしまいます。無色のものもワックス分が多く、毛穴に白っぽく残るので避けた方が良いでしょう。手入れの後はカビの原因となる湿気を取り除くため、よく陰干ししてから収納しましょう。シーズン前には防水スプレーを使用して水や汚れから革を保護するようにすることです。

カビをおさえるには・・・

  1. 乾燥状態にしてカビに水分を与えない。
  2. 低湿にしてカビの成育をおさえる。
  3. 汚れを除き、栄養源を与えない。

ということが大切です。

実際にカビが生えてしまった場合は、少しだけなら、水に濡らした後かたく絞った布や食パンで擦って取れることがあります。拭いた後は陰干しして、できるだけ使用することが最良の防カビ対策になります。
また、シーズンが終わったら、あるいは長く使用しない場合、できるだけ早く革から水分を除去するようにしましょう。年数回は晴れた温度の低い日を選んで陰干しをするのも効果的です。

雨の日に革衣料やバッグを使用することはできるだけ避けるのが良いようです。というのも革衣料や高級バッグには高級感が求められます。これらにはなめらかで適度の弾力性のある感触の良い革が要求されます。色つやがぼけず、ごわごわしたりせず、摩擦にも強い革が良いとされるのです。革の堅ろう性を保つにはそれなりの塗装を施す必要がありますが、なめらかな感触・風合いは損なわれることが多いのです。革らしさを最も強調した革は、素上げや薄い塗装仕上げを施したものが多く、その表面は塗装膜に十分には覆われていません。そのために水に弱いのです。濡れた革は水分により膨らみますが、水分が蒸発して乾燥すると収縮が起こり、繊維間の摩擦が大きくなって潤滑性が失われます。硬化し、風合いも損なわれます。これは織物(布)を洗濯し、乾燥させたものがごわごわするのと同じです。革の繊維構造は織物に比べて大変ち密ですから、その差も大きいのです。また革は部位によって繊維構造の差があるため、収縮の度合いも異なり、その結果型くずれが生じることになります。風合いが損なわれたり、型くずれしたものの修復は、その程度にもよりますが、一般的にかなり困難だと考えましょう。

革繊維の防シワ、防縮を目的とした加工で尿素ホルムアルデヒド樹脂による処理があります。この樹脂で処理した衣服はホルムアルデヒドを遊離しやすく、皮膚障害が起こることがあります。ただし、衣服中のホルムアルデヒドは法律で規制されています。革製品中の場合も同様の基準値が考えられています。通常のクロム革中のホルムアルデヒドが基準値を超えることはほとんどありませんが、製革工程で薬剤を使用した場合には超えることもあるのです。少しでも不安に思ったらすぐ専門家に相談するようにしましょう。

革の主成分であるコラーゲンタンパク質は無臭ですが、さまざまな工程を経ることで種々の臭いが付着します。製革・加工工程で臭いの原因と考えられるものを挙げてみましょう。

  • 原料皮
    皮や付着物の腐敗、防腐剤
  • 準備工程
    脱毛剤、脱毛処理生成物
  • なめし工程
    なめし剤(タンニン、タンニン浴中の腐敗生成物、アルデヒド類、合成鞣剤)、加脂剤(魚油、油の酸化生成物)、防腐剤、染色助剤
  • 仕上げ工程
    仕上げ剤、溶剤製品、加工:接着剤、カビ、着用中の異物の付着や移臭。

これらの原因物質は製品革に常に残るものではありませんが、扱いが不適切であったり、特珠な製革法を用いた場合に臭気が残ることがあります。ただ、臭いの成分が複合したり、個人差もあるので、悪臭の原因を明らかにすることは困難です。消臭剤や防臭剤などには明確な区別はありませんが、次の分類を参考に試してみてください。

●消臭●

酸化・還元・中和・縮合・付加反応のような化学反応や微生物などの生物作用で臭気物質を別の低臭気物質に変換して臭気を消すもの

●脱臭剤●

活性炭、シリカゲルやゼオライトのような多孔性物資により、臭気物資を物理的に吸収、吸着及び分解などによって除くもの

●防臭剤●

抗菌剤などの物質を添加して、臭気の発生や発散を防ぐもの

●芳香剤●

香料、植物精油のような芳香性の物資を添加して、マスキング、中和の効果を軽減するもの

色落ちの直接の要因は革の中の染料や顔料が他の繊維素材や革に移行する場合と、染色革の細かい繊維粉末の付着のふたつのケースがあります。前者は繊維などでみられる一般的な色落ちです。これは染料や顔料の、革との結合が弱いため他繊維を汚染してしまう場合です。また、後者はスエードやヌバックの起毛(バフィング)処理によって生じるバフ粉が最終まで残ってしまった場合です。

染色に関しては年々改善されていますが、革の色落ちを防止するには、革製品を水や雨に濡らさないことがまず重要です。.防止策として、着用前に市販の防はっ水スプレーの使用をおすすめします。乾燥の摩擦による色落ち防止策は、今のところよい方法がないので購入時に良く確認しておきましょう。汗やクリーニンクによる色落ちに対する消極的な対策としてはアクリル、アセテート、ポリエステルなどを使用して皮革用染料に染まりにくくする方法もとれます。起毛革の色落ちについてはブラッシングするか、クリーニング処理などによってバフ粉を除去できる場合もあります。

これらの革は塗装仕上げ膜がないか、または薄いので、まず最初に水や汚れから革を守るビフォーケアとして市販の防水スプレーの使用をおすすめします。しかし、水がかかったり、飲み物などの液状の汚れがついたときは、それらが革の中にしみこむ前にできるだけ素早くハンカチやティッシュで吸い取るようにしましょう。日常の手入れとして、使用した後にはから拭きやブラッシングを十分に行っておきましょう。それでも落ちない汚れは、消しゴムタイプのクリーナーを使って試みます。食パンの柔らかい白い部分でこすっても良いです。ややきつい方法ですが水で濡らし硬くしぼったタオルで汚れを拭き取ることも可能です。ただ、素上げやアニリン革では濡れるとしみができるものもありますから、そのような場合はこの方法はとれません。また、起毛革は濡らすと毛羽の美しさを損なう場合もあります。ベンジンやシンナーなどは油性の汚れを良く落としますが、しみなどが出来やすいので使用しないでください。

日本袋物協会では、爬虫類革のバッグに対して、自主的な品質表示規定を定めています。それによると、外面積の60%を超える素材を使用する場合、「ワ二」や「トカゲ」のように表示するようにしています。カバンやベルトでは、ワニやトカゲなどの革は、「通常生活の用に供する」家庭用品ではなく、贅沢品であり、また、識別が難しいので、品質表示の対象から除かれています。したがって、素材名が表示されていたり、紛らわしい名前がついていたり、また表示自体が成されていなかったりするのです。一般的に、爬虫類の模様をまねた革を作るには型押しをすることになります。型押しは牛革、豚革、床革やレザーボード等に、型板やロールで加圧し、動物の銀面模様の型をつけます。また、模様のついた塩化ビニールフィルム等を床革に張りあわせたものもあります。型押しであるかどうか、外観からのみでは簡単に識別できない場合が多いようです。ではどうしたら良いのでしょう。

  1. 模様が均-かどうかを見る
    動物は一匹ずつ個性があり、模様が均-すぎる場合は偽物です。
  2. 銀面模様の凹凸の様子を観察する
    革断面を顕微鏡で見ると、本物は凹凸が深く、本物でない場合は凹凸が浅いということがあります。

「2. 」は普通の家庭ではなかなか困難ですから、「1. 」を目安にすると良いでしょう。

エナメル塗膜のつやが消える原因は大きく二つに分けられます。一つは塗膜の表面の変化によるもので、もうひとつは内部の変化です。表面の変化には

  • 太陽、蛍光灯などの光や熱による変化
  • 使用過程での細かいしわおよび擦り傷の発生
  • 手あか、汗など各種生活汚染物質の付着

などが挙げられます。

内部の変化としては本来革素材中に安定して存在するはずの動物油や下塗り塗料中の各種ワックス類がエナメル塗膜中に少しずつ移行することにより起こります。この結果、エナメル塗膜に不純物が入り込む状態となり、光沢が低下します。防止対策としては使用時のていねいな扱い、柔らかい紙や布での包装、シューキーパーによる型くずれの防止などで、擦り傷やしわの発生はある程度防ぐことができます。また、手あかや汗など各種生活汚染物質が付着した場合は、薄めた中性洗剤をつけた柔らかい布で拭き取ると良いでしょう。

人工皮革といっても現在では実に多くの種類かあります。中には本革とほとんど見分けがつかないものまで出てきています。明確に区別するのは大変困難になってきているのですが、いくつかの方法を挙げてみましょう。

  • ラベル、品質表示、レザーマークの有無など。
  • 品質の判る切り口(例えばベルトのバックルをはずしてみる)を探し出し、本革特有の断面構造をしているかどうかを見る。
  • 縫い目の形状は本革と人工皮革ではかなりの差があるので、見近かにある本革製品と比べてみる。
  • 人工皮革は手のひらをあてていると汗ばむ傾向がある。本革はしっとりとした感触がある。
  • 本革は動物の生体時の傷やシワなどによる不規則性があって一様ではない。人工皮革は全体として均-である。
  • 本革は表面を濡らしてすぐ拭き取ると、かすかなシミが一時的に残ることが多い(これは容易に直せる)。
  • 人工皮革は焼くと発泡したり、溶解しながら燃える。本革は、はるかに燃えにくく、変形しにくい。

これらの方法を一つだけではなく、複合的に試してみると、よりはっきり区別することができます。

革を構成するコラーゲン繊維は親水性であり、繊維同士が立体的に交絡した構造(組織)を持っています。このため、微細な間隔が多く、この多孔性が靴のはき心地や衣料としての快適性など、革の特徴を発揮しています。革は湿度(相対湿度)の変化に応じ、容易に水分を吸収し、また放出します。このように、革が水分を吸収し、放出する作用を”革は呼吸する”とたとえ、革の最も大きな特色ともいえるのです。人工皮革の靴と比較して、革靴のむれが少ないのもこのためだといえば、より判りやすいでしょう。

製革に関する単独の博物館はありません。しかし、靴、鞄、革衣料など革製品を展示している博物館としては次のようなところがあります。

  • 日本はきもの博物館(福山市)
  • 国立民族学博物館(吹田市):「民族と革製品など」のテーマで展示
  • (財)アイヌ民族博物館(北海道白老郡):アイヌ民族の革製品
  • 兵庫県立歴史博物館(姫路市):「姫路白なめし革の製造から革製品の加工まで」

またこの他、皮革産業資料館(東京都台東区)や東京国立博物館(東京都台東区)などがありますので、参考にしてください。

白い粉、またはカビ状のものを”スピュー”といいます。スピューの成分は塩または脂肪のいづれかです。両者を区別する方法があります。それは水拭きして消えるのが塩スピューで、消えないのが脂肪スピューです。

塩スピューは靴に発生することが多いようです。靴が雨などに濡れると、浸透した水分が蒸発する時、呼び水となって、革中に存在する塩を表面に運び、乾燥後”塩吹き”と呼ばれる白い粉が析出します。ではなぜ革中に塩が存在するかというと、それは製革工程で使用されたものや、発汗によるものと考えられます。この塩スピューは、水に浸して硬くしぼった布で拭けば簡単に取り除くことができますが、革中に塩が存在すると、再び発生し、完全に防ぐことは困難です。対処法として、革に防水性を付与して水の浸透を防ぐこと、浸透した水は早めに除去すること、靴の内側に潮解しない乾燥剤や新聞紙を入れて陰干しするなどの工夫が必要です。

一方、脂肪スピューは衣料革に発生するケースが多いようです。脱蝋不十分の天然油脂、またはパラフィンなど高融点の合成脂肪を含有する加脂剤を使用したり、あるいは動物の体脂肪の除去が不十分で、革に残留した場合に発生しやすくなります。対処方法としては、ドライクリーニングによって、脂肪成分を除くこと、低融点の油剤を添加することなどによって軽減されることがあります。